開業10周年 介護タクシーを10年間続けて、今思うこと ~これまでとこれから~
更新日:9月23日
開業10周年記念インタビュー「介護タクシーを10年間続けて、今思うこと~」2026年8月16日、あいしーえふ介護サービスは開業10周年を迎えます。
10年間を振り返り、これまでのこと、仕事に対する考え方、そしてこれからについて、インタビューして頂きました。
少し照れくさい部分もありますが、10年間この仕事を続けてきた一人の介護タクシー事業者の率直な気持ちをお伝えします。
第1章 原点と開業のきっかけ
Q. 介護タクシー事業を開業する前は、どのような仕事をされていましたか?
介護タクシーを開業する前は、介護老人保健施設や高齢者サポート住宅で働いていました。
また、それと並行して、以前から関わりのあった印刷関連の仕事も少しですが継続しており、介護の仕事に携わるようになったことが、現在の介護タクシーにつながる大きなきっかけになっています。
Q. 様々なキャリアを経験された中で、最終的に「介護タクシーを自分でやろう」と決意したきっかけは何だったのでしょうか?
もともとはデイサービスを開業しようと考えており、介護の知識がほとんどない状態で事業を始めるよりも、まず自分自身が介護の現場に入り、知識や資格を身につけた方が良いと思い、介護の仕事を始めたのがきっかけです。
その後、介護保険制度が変わり、自分が考えていたデイサービスの事業としては、思うような収益を得ることが難しくなると考えはじめ、実際にデイサービスを経営されている方からも「今から始めるのはあまり勧めない」と言われ、デイサービスの開業は断念し勤務していた施設に出入りしていた介護タクシーを見て、「介護タクシーという仕事があるのか」と興味を持ったことが、現在につながっています。
そこから色々と調べ始めました。
Q. どのように調べたのですか?また、なぜ介護タクシー団体アイラスに加盟したのでしょうか?
まず、病院や施設に行き、実際にどのくらい介護タクシーが来ているのかを自分なりに調べ車両保険をお願いしている担当者にも「介護タクシーをやっている人を知りませんか?」と聞き、できる限り情報を集めました。
最終的にアイラスに入会したきっかけは、保険会社からの紹介です。
ただ、紹介されたからすぐに入会したわけではなく実際にアイラスに加盟している事業者のところへ行き、「本当に介護タクシーとして稼働しているのか」を自分の目で確認したりもしました。
今思えば、かなり慎重だったと思います。それくらい、開業することに対して不安もありましたし、失敗したくないという気持ちも強かったのだと思います。
Q. 開業当時、周囲の反応や、期待・不安はどのようなものでしたか?
介護福祉士の資格も持っていましたし、介護現場での経験もあったので、正直なところ、開業当時は少し「自分ならできる」という気持ちもありました。
今思えば、少し変な自信だったと思います(笑)。
実際に始めてみると、介護職時代(施設勤務)とはまったく違い、運転、階段介助、ご自宅の中での介助、病院との時間調整、道路状況を考えたスケジュール管理など、施設の中では経験したことのないことばかりでした。
そして、もう一つ大きかったのが、団体に所属して仕事をするという責任で、自分一人のミスで終わるのではなく、自分の対応が団体全体の信用にも影響する。
その意識は開業当初から強く持っていましたし、10年経った今でも変わりません。
第2章 10年間の歩みと挑戦
Q. 2016年の開業から10周年を迎えました。率直に、今どのような気持ちですか?
正直なところ、「よく10年やってこられたな」というのが一番近い気持ちです。
自分一人の力で10年間続けられたとは、まったく思っていませんし、特にアイラスの支えは大きかったです。
仕事の代行や情報交換、地域でのつながりなど、困った時に相談できる仲間がいることは非常に心強いもので、もし完全に一人で始めていたら、10年間続けられなかったと・・・
10周年を迎えた今だからこそ、改めて**「人とのつながりに支えられてきた10年間だった」**と感じています。
Q. 開業直後の1~2年目と、現在とで、一番変わったことは何でしょうか?
一番大きく変わったのは、介護タクシーを取り巻く環境だと思います。10年前、足立区では介護タクシーの事業者は今ほど多くありませんでしたが、現在は新規開業も増え、10年前と比べて事業者数も大きく増えています。
特徴として、医療系の搬送を中心にする事業者、介護保険と組み合わせて事業を行う事業者、複数台を所有して幅広く対応する事業者、など、それぞれ特色を持った事業者も増えています。
昔とは違い、今は「介護タクシーを始めれば仕事が来る」という時代ではありません。だからこそ、これまで以上に自分自身の強みを考えなければならないと感じています。
10年間続けてきたから安心、ではなく、10年経った今だからこそ、また新しい努力が必要なのだと思います。更に開業から暫くは今振り返ると無理してスケジュールを入れ余裕が無い搬送をしてたと思います。
Q. この10年間で、最も壁にぶつかった時期や苦労したことは何ですか?また、それをどう乗り越えましたか?
実は、私の場合「この時期が一番大変だった」というものはありません。壁は、今でも毎回あり搬送が終わると、「今日のルートは本当にこれで良かったのか」「説明が足りなかったのではないか」「もっと事前準備ができたのではないか」「車内での会話は適切だっただろうか」と、毎回何かしら反省します。
前回の10周年記事でも、いくつか忘れられない出来事を書きましたが、あれも10年間の中で経験した「壁」の一部です。
私は、この仕事をしている限り、壁を完全になくすことはできないと思っています。むしろ、経験を積むほど、「もっとできることがあるのではないか」と考えるようになりました。10年前には見えなかった問題が、経験を積んだ今だからこそ見えることもあります。
だから私は、壁を「乗り越えて終わり」にするのではなく、次の仕事に生かすための材料として受け止めるようにしています。
第3章 現場で感じること、忘れられない出来事
Q. これまで数多くの移送をされてきた中で、特に心に残っている出来事はありますか?
10周年第1弾の記事で、いくつか詳しく書かせていただきました。「辛い別れ」「ターミナルケアと猫」「大雪の中での宇都宮搬送」「結婚式への搬送」「車内での心肺蘇生」など、10年間で忘れられない出来事は数多くありどれか一つを選ぶこはできません。楽しかった出来事もあれば、今でも思い出すと胸が苦しくなる出来事もあります。ただ、それらすべてが今の自分につながっています。
Q. 介護タクシーという仕事をしていて、「この仕事をやっていて本当に良かった」と思える瞬間は?
介護職時代と比べると、この仕事では直接「ありがとう」と言っていただける機会が多くあります。特に、「佐藤さんで良かった」「次回もお願いします」と言っていただいた時は、素直に嬉しいですしそれだけで「また頑張ろう」と思えます。
また、通院などで継続して利用されている方が、最初は体調が悪かったのに、次第に元気になっていく姿を見ることができるのも、この仕事の嬉しいところです。
介護タクシーは、ただ目的地までお送りする仕事ではありませんので。
その方の生活の一部に関わらせていただく仕事だからこそ、元気になっていく姿を見ると、こちらも嬉しくなります。
直接は関係ないですが、地方の知らない場所で綺麗な景色を見れるのも良いですね
Q. 「移動手段」にとどまらず、安心して利用していただくために、日々意識していることは?
意識していることは、一つではありません。前回利用された時と比べて今回のご様子はどうか?ご家族様から何か変化について情報をいただいていないか?車内で会話をするのが好きな方なのか?それとも静かに過ごしたい方なのか?車内温度は適切か?目的地は間違っていないか?復路で待ち時間が少ない様に調整しないと、時間通リ地到着出来るか?そして、初めて利用される方には、できるだけ料金についても詳しく説明するようにしています。
こうしたことを一つひとつ確認しており、介護タクシーは、利用者様の体調やご家族様の状況によって、毎回条件が違います。だからこそ、「前回と同じようにやれば大丈夫」とは考えないようにしています。
その日の利用者様、付き添いのご家族様をよく見ること、それが一番大切なのだと思っています。
第4章 地域と仲間とのつながり
Q. 足立区を中心とした地域密着の運行や、アイラスなど同業の仲間との協力について、大切にしていることは?
介護タクシーは、横のつながりが広いほど仕事を続けやすいと私は考えており、逆に自分一人だけの狭い世界で仕事をしていると、困った時に相談する相手がいなくなってしまいますが当社が加盟する、アイラスには代行の仕組みや地域会議などがあり、仲間とのつながり、情報を持てることが大きなメリットです。少し話が逸れますが、アイラスには、救急救命士(東京消防庁出身)看護師、技能検査技師、介護専門職員(ケアマネ)介護福祉士の資格を保有する者も居り、珍しい方では、自動車教習所教官出身者も、加盟条件として最低でも介護初任者資格が必要と面接がありますので個々のレベルが高いです。
仲間が多いからこそ自分のいい加減な対応が周囲にも影響することを意識しており、当たり前ですが、遅刻をしない、きちんとした接遇をする、安全運転をする、料金の明確化などその積み重ねが団体全体の信用にもつながると思っています。
Q. 長年利用されているリピーターのお客様や、病院・施設のスタッフとの信頼関係は、どのように築かれてきたと思いますか?
正直に言うと、「自分は人間関係を築くのが得意だ」とは思っていません。むしろ、今でも当社を選んでいただけること自体が、本当にありがたいと思っています。
介護タクシーは、たくさんある事業者の中から選んでいただかなければなりませんので、当社が常に「一番手に連絡される」とは思っていません。
それでも、「今回は佐藤さんにお願いしよう」「まあ、佐藤さんで良いか」
と思っていただけることは、本当にありがたいことだと考えており、依頼をいただいていることを当たり前だと思わないようにしています。
一度のご依頼で終わるのではなく、次も声を掛けていただけるように、一件一件を大切にする。結局のところ、それを10年間繰り返してきた結果が、色々な意味で今につながっているのだと思います。
第5章 介護タクシー 開業10周年これからのこと
Q. 10周年を迎え、これから新しく挑戦したいこと、見直していきたいことはありますか?
少し抽象的ですが、「利用される方の困ったことを解決できるでありたい」と思っています。
介護タクシーを利用される方は、「車に乗りたい」という一つの目的だけで問い合わせてくるわけではありません。「階段があって困っている」「車椅子のままでは移動できない」「病院までどうやって行けばいいのか分からない」「料金がどのくらいになるのか分からない」「復路で長時間待ちたくない」など、様々な困りごとがあります。
その一つひとつに対して、「それなら、こういう方法があります」と言える様にしていきたいと思っており。ホームページで料金を詳しく説明したり、ブログで介助方法や介護タクシーについて情報発信したり、アイラスの仲間が代わりに対応してくれたり、料金シミュレーターを作っているのも、その一環です。
これからも、ただ車を走らせるだけではなく、**「困った時に相談できる介護タクシー」**を目指していきたいと思っています。
Q. これから介護タクシーを開業する方や、同業界で頑張っている後輩ドライバーへ伝えたいことは?
開業を考えている方には 一人だけで始めることはあまりおすすめしません。
もし私が今から開業するのであれば、アイラスのような団体に加盟することを選ぶと思います。
仕事の代行、情報交換、困った時の相談など、横のつながりがあることは大きな力になります。そして、この仕事は人間性が問われる仕事なので、利用者様やご家族様の気持ちを考えられない方、相手の立場に立って考えることが苦手な方、楽をして利益だけを得ようとする方には、長く続けるのは難しい仕事だと思います。
介護タクシーは、運転技術や介助技術だけでは続きません。
人に対する姿勢そのものが問われる仕事だと思います。
私自身も、まだまだ勉強中で、だからこそ、これから開業する方にも、技術だけではなく「人としてどう接するか」を大切にしてほしいと思います。
最後に
Q. これまで支えてくださったご利用者様、ご家族様、地域の皆様へメッセージをお願いします。
10年前、介護タクシーを始めた時には、自分が10年間この仕事を続けるとは思っていませんでした。振り返ってみると、本当に多くの方に支えていただきました。
ご利用者様、ご家族様、病院や施設の皆様、アイラスの仲間、整備工場の皆様。改めて、この場をお借りしてお礼を申し上げます。
ただ、10年続けたからといって、すべての壁を越えられたわけではありません。
むしろ、年数を重ねるほど、毎日、毎月、毎年、新しい壁が少しずつ高くなっているように感じます。
そんな中で、私が大切にしている桜井章一氏の言葉があります。
「よい内容で勝つこと。次に望ましいのは、よい内容で負けること。悪い内容で負けることはその次で、最も望ましくないのは、悪い内容で勝つこと。」
介護タクシーは、利用される方が料金の仕組みを知らないことを理由に、不透明な高額請求をしている業者も居ります。開業当初から不正な事して利益を出すのではなく、全うな料金を請求し、自分が持っているスキルで対応し利益が少ない、他社に取られた、次回依頼に繋がらない場合でも
「良い内容で負けるのであれば、それは仕方がない」と考えています。
仕事をいただくために、分かりにくいことを分かりにくいままにするのではなく、ホームページやブログで介護タクシーの仕組みや料金体系をできるだけ詳しく説明する、初めて利用される方にも、「これなら安心して頼める」と思っていただけるようにする。それが、これからの私が続けていきたい仕事の一つです。10年間、本当にありがとうございました。
そしてこれからも、「困った時に相談してもらえる介護タクシー」
であり続けられるよう、一件一件のご依頼を大切にしていきたいと思います。
今後とも、あいしーえふ介護サービスをよろしくお願いいたします。
あいしーえふ介護サービス代表 佐藤
■ 記事監修者
あいしーえふ介護サービス代表佐藤昌明
介護老人保険施設、高齢者サポート住宅、等の勤務経験が有り国家資格 介護福祉士を保有
2016年8月開業以来、15000人以上の搬送者数で東京消防庁より表彰状授与2回、患者搬送乗務員、東京防災救急協会会員、NHK学園卒



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