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災害時患者搬送講習会前編

  • cast74
  • 11月16日
  • 読了時間: 4分


このたび、11月4日麹町消防署内で開催された 「患者搬送レベルアップ講習会」 に参加して参りました。


1. 介護タクシー・民間救急に関わる資格について


介護タクシーや民間救急を名乗る多くの搬送事業者は、「東京消防庁認定 患者等搬送事業者」 の資格を保有しています。この資格は初回講習2日間、2年毎の更新講習で保有が可能で、当社も同資格を保有しております。


一方、当社はもう一つ「公益財団法人 東京防災救急協会」 にも加盟しています。


この協会は東京都の外郭団体で、一般の方が受講する下記の講習を実施しているのが特徴


  • 応急手当講習(救命講習)

  • 防火管理者・防災管理者の資格講習

  • 消防設備士講習 など


協会に属する 「東京民間救急コールセンター」 からの依頼搬送も当社は、受任しております。


講習会は年2回程度開催され、現役の救急隊員も参加 する実践的な内容です。開催場所が「東京消防庁 麹町合同庁舎内」にあることからも、信頼性の高さが伺えます。


2. 講習内容


今回の講習会では、以下のテーマで学びました。

  1. 大規模災害時の患者搬送要領

  2. 東京消防庁の救急活動の現状 + 現場での実技(搬送要領)


「大規模災害時の患者搬送要領」


講師:杏林大学医学部 主任教授 山口先生

講義では、「もし現代に関東大震災級の大地震が起きたら」という視点で、被害想定と対処について


1923年・関東大震災の主な死因

  • 火災:8割以上

  • 建物倒壊による圧死:1割

  • その他(溺死・土砂災害など)→ 死者・行方不明 約10万5千人


現代で同規模地震が起きた場合の東京都の想定


建物の耐震化や不燃化の進歩により被害は減少するとされ、東京都の発表では以下の数字が示されています。


  • 死者:約6,150人(火災・倒壊)

  • 負傷者:約93,000人

  • 要救助者:約72,000人


特に印象的だったのは教授の次の言葉です。

  • 地震速報が鳴っても対処はほぼ不可能。揺れは速報と同時に来る。

  • 津波は東京だと大丈夫だと思われがちだが場所により危険


3. 津波の影響について


東京は「内陸なので津波は大丈夫」と思われがちですが、最大 2mの津波 が予想されており、荒川、墨田川を遡上してくる可能性があります。

そのため、江戸川区・荒川区・足立区 などのゼロメートル地帯では浸水の危険性が高い と指摘されました。


当社は火災の鎮火を行う消防とは関係がありませんので建物倒壊などで負傷した方の救護が活動内容となります。

災害訓練速報

災害時に当社が担う役割と搬送の流れ


4. 当社が災害時に搬送する対象者


大規模災害が発生した際、当社が搬送を担当するのは トリアージタグ黄色(軽症~中等症)」の方 です。民間救急は、命の危険が差し迫った赤(緊急)ではなく、バイタルサインが比較的安定している傷病者 の搬送を担当します。


トリアージタグ

5. 災害発生後の当社の動き


  1. 西新井消防署より出勤命令が発令

  2. 当社車両で消防署へ向かい、通行許可証を受領

  3. 許可証により、大規模災害時の交通規制区間(環七の出入り制限など)を通行可能

  4. 指示された災害現場へ移動※本人(乗務員)が安全に行動できることが前提となります。

6. 現場到着後:トリアージによる搬送判断


被災者の搬送優先度を示すのが 「トリアージタグ」 です。


  • 赤(緊急):生命に関わる重症

  • 黄(中等症):治療は必要だが、命の危険は急迫していない

  • 緑(軽症)

  • 黒(死亡)

民間救急が搬送するのは 原則「黄色」 です。

ただし、現場ではタグがついていない場合も多く「本当に黄色か?」を判断する力が求められます。今回の講習では、その見極めを重点的に学びました。


7. 黄色判定のための観察ポイント(一次トリアージ)


まずは、被災者に声をかけ、意識状態の確認 を行います。


観察する主な項目


  • 意思疎通ができるか?

  • 手を握り返せるか?(反応)

  • 呼吸回数(正常:成人12〜20回/分)

  • 脈拍(正常:成人60〜100回/分)

  • CRT(毛細血管再充満時間)

    • 爪を5秒圧迫し、色が3秒以内に戻る → 正常

  • 従命反応(指示に従えるか)

これらが「大きく逸脱していない」場合に 黄色区分 となります。


トリアージ判定

8. 搬送不可の具体例


講習で取り上げられた事例では、呼吸数が40回/分と異常に多かったため、黄色とは判定できない=当社による搬送不可という判断となりました。

黄色区分は、治療が多少遅れても生命に重大な危険がない状態であることが必要です


9. まとめ


今回の前半講習は50分と短時間でしたが、災害時における民間救急の役割の大きさを再認識しました。


  • 大震災の主な死亡原因:火災、建物倒壊、津波

  • 大規模災害では消防力が圧倒的に不足

  • そのため 民間救急による「黄色区分」傷病者の搬送が重要な役割 を担う


当社も消防署と連携し、災害時に迅速かつ適切な搬送が行えるよう、日頃から知識と技術の習得に努めてまいります












 
 
 

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