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乙武洋匡氏講演介護タクシーが学んだこと

  • cast74
  • 3 日前
  • 読了時間: 6分

更新日:1 日前


― バリアフリーの“その先”にあるもの ―


2月6日、当社が所属する介護タクシー団体「アイラス」にて、乙武洋匡氏をお迎えした講演会が開催されました。

私たち介護タクシー事業者は、日々多くのご利用者様をお乗せしていますが、・ご高齢で会話が難しい・認知症が進んでいる・耳が遠く、意思疎通が困難・疾病により発語ができない

といった理由から、「ご本人の声」を直接聞く機会は決して多くありません。その分、ご家族様とお話しする場面はありますが、当事者ご本人の生の言葉を、じっくり聞けた今回の時間は、私たちにとって非常に貴重なものでした。


東京の交通機関は、本当に「使いやすい」のか?


乙武氏は普段、スタッフが運転する介護車両で移動されることが多いそうですが、スタッフがお休みの日などは、積極的に公共交通機関を利用されているとのことでビックリ

高校時代、今から約30年前のJRは、山手線内ですらエレベーターがほとんど設置されておらず、駅員さんが約100kgある車いすを人力で持ち上げ、階段を上り下りしていたそうで、「腰を痛めてしまうかもしれない」「大きな声で乗客の方に、通りますと声掛けしてる」

その光景を前に、乙武氏は「申し訳ない、迷惑をかけているのではないか」と感じるようになったと語られており、バスを利用する様になりました。当時車いす対応のバスが1時間に1本。乗れなければ、次のバスまでひたすら待つ――それが日常だったそうです。


JRの状況を目の当たりにしてバス移動がメインになったのは理解出来ますが過酷すぎです


令和の東京で「一番使いやすい路線」


時代は進み、バリアフリーは大きく進化しました。30年前と比べると、驚くほど便利になっています。

そんな中で、乙武氏が「一番使いやすい」と話されたのが東京さくらトラム(旧・都電荒川線)


道路からスロープでそのまま乗車でき、車両とホームの隙間もほとんどない。「古い路線」というイメージとは裏腹に、実は非常に乗りやすいとのことでした。

次に使いやすいのが都営大江戸線。六本木駅ではエレベーターを2回乗り換える必要があるものの、エレベーターすらなかった時代を思えば、十分に使いやすいと感じるそうです。


一方、大江戸線の後に出来た、副都心線は相互乗り入れがあるため、車両によって乗りやすさが異なり、戸惑うこともあるとのお話もあり多くの方が利用される、JR東日本はエレベーター設置率こそ高いものの、スロープ準備や駅間連絡の関係で、何本も電車を見送らなければならないことが多いそうで良くも悪くも、旧国鉄時代の「お役所仕事」の精神を感じる――その言葉が印象的でした。


海外を旅して気づいた「本当のバリアフリー」


乙武氏は世界106か所を旅されており、最も長く滞在したのはロンドン(3か月)。

「東京とロンドン、どちらが便利だと思いますか?」

多くの人がロンドンと答えそうですが、実際に便利なのは東京だそうです。

しかし、ロンドンでは不思議な光景がありました。エレベーターのない場所で車いすの方が困っていると、見知らぬ人が自然と集まり、ホームまで運んでくれる

ハード面は不便でも、人の“姿勢”があるから、安心して外出できる文化が浸透してます。


では、東京で同じ状況が起きたら――何人の人が、声をかけてくれるでしょうか。

乙武氏はこう語ります。「日本人はとても優しい。でも、車いすの人に慣れていない。声をかけたら迷惑ではないか、と考えてしまう」

この言葉は、深く胸に残り自分にあてはめて考える良い機会となりました。


世界各国を旅する中で、乙武氏は実に興味深い体験を重ねてこられたそうで、たとえばキリスト教圏、車いすに乗ったままお店の前で立ち止まっていると、「助けを必要としている人」と受け取られ、わずか10分ほどで5ドル相当のお金が集まることもあるとのこと。善意ではあるものの、そこには“保護すべき存在”として見られる視線も感じられるそうです。


一方、タイでは地雷の影響などにより車いす利用者が決して珍しくなく、人々の関心は乙武氏ご本人ではなく、上下に伸び縮みする特殊な車いすそのものに向けられるそうです。「その車いすはどうなっているの?トヨタ?ソニー?」と、好奇心の対象は、車いすで、本人に特別な視線が向くことはほとんどないと語られていました。


そして北欧。そこでは、車いすであることが特別視されることもなく、街の風景の一部として自然に溶け込める。困ったときには、声を上げる前に誰かがさっと手を差し伸べてくれる――「とても過ごしやすく、心から安心できる国々だった」と、印象深く話されていたのが心に残ります。


24時間テレビへの率直な提言


24時間テレビについては、功罪もあると話されていました。

寄付金が集まり、福祉車両などに使われるのは素晴らしい。しかし一方で、障害者を固定された視点”で描いてしまう危うさもある。

特に疑問なのが「マラソン」。炎天下で走る意味は何なのか?障害に関係あるのか?

代わりに提案されていたのが「アイドル24時間車いす生活」

起床、移乗、洗面、着替え、移動、トイレ探し、ロケ先での動線…。24時間過ごしてみて初めて、リアルな課題が見えてくると力説されていました。


乙武洋匡氏講演介護タクシーへの率直な提案


質疑応答では、介護タクシーについても触れられ

「とても感謝している」と前置きした上で、階段介助の際、

×「後ろから上がります」〇「後ろから上がりますが、よろしいでしょうか?」

一言の確認があるだけで、安心感がまったく違うとのこと。

実際に階段介助は声掛け、ヘルパーとの呼吸合わせも大切


また、車両デザインについて「正直、ダサいのが多い」とのご意見もあり、ここは当社も強く共感しました。


講演を終えて感じたこと


お話を聞き、私たち介護タクシー事業者にとっても大きな気づきがありました。車両や設備といった「ハード面」を整えることはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、ご利用者様を“特別な存在”として扱うのではなく、一人の生活者として自然に向き合う姿勢なのだと改めて感じました。


声のかけ方ひとつ、間の取り方ひとつで、安心感も信頼感も大きく変わります。今回の講演は、移送技術や制度の知識だけでは補えない、人としての向き合い方を学ぶ貴重な機会となりました。


● 追記で30年前に乙武洋匡氏の階段介助を行うとしたら、車椅子に乗った状態では危険ですので行いません。

手順として、本人を駅の椅子か、事務所椅子に座ってもらう→空の車いすを先行で降ろす→ご本人を布担架で降ろします。電動昇降機は30年前にはありません


以上あいしーえふ介護サービスが、乙武洋匡氏講演介護タクシーが学んだことお伝えさせて頂きました。

乙武洋匡氏の講演

 
 
 

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